大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)42号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高橋登、同高橋正己の上告理由について。

所論は、本件につき弁理士高橋登、高橋正己は上告人を代理して特許出願の拒絶査定について抗告審判を請求する権限を与えられていなかつたと主張するが、原判決が乙第一号証により右権限をも与えられていたものと認定したことは首肯することができる。委任状における権限の事項が印刷されたものであり、その委任状が一年前に作成されたとしても、これがために当事者がこれによる意思がなかつたものと解すべきでないこと、原判決の説示するとおりである。そして、たとい当事者本人について特許法二五条にいう「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由」があつたとしても、同人に代り行為をする権限のある代理人が存在し、この代理人にはなんら右の事由がない場合には、代理人がその権限に基き行為をすることを妨げるものではないのであるから、かかる場合には同条により懈怠した手続の追完をすることはできないものと解すべきことも原判決の説示するとおりである。されば、原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例